働き方は本当に改革されるのか。働きやすい社会になるのか。
なりません。残念ながら。
なぜなら…
気になる過去最高値とは…
ドゥルルルルルルルル…………………………
…
…
…
…。
デン!!!
2.65%‼!!!
え?
は?
2.65%!?
少なっ!
【参考資料(?)】
司法試験の合格率…23.1%(平成27年)
公認会計士試験の合格率…10.8%(平成28年)
税理士試験の合格率…13.2%(平成28年)
宅建試験の合格率…15.4%(平成28年)
上記の様な難関試験で合格率は10%台というのが多いですね。旧司法試験や司法書士などで2~4%。
つまり男性社員であるあなたがもし育休を取得できたとしたら超難関試験に合格するくらいの快挙を達成した、ということになるのです。
上司という鬼試験官を突破して…
なぜ男性は育休が取れないのか
この育休取得率の発表は昨年の7月にされています。
男性の育児休業取得率、過去最高の2.65% 15年度調査 :日本経済新聞
日本での男性の育休取得率は1~2%台をウロチョロしています。
一方で「育休を取得したい」と望む男性は60~70%台という調査結果もあります。
理想と現実は得てして乖離するものですが、さすがに乖離し過ぎではなかろうか。そもそも法律上育休は一定の条件を満たせば取れるものです。特に昨今は共働きが主流ですし、親も60~65歳くらいでも働いていたりすることもあるのでそう気軽に頼ることもできないですし。
法律上認められた権利であるのになぜ取れないのか。少し古いですがNIKKEI STYLEに興味深い考察記事があります。
(引用元:NIKKEI STYLE「出世ナビ」2013/8/5 日本経済新聞社/日経BP社)
平成29年から法律が変わります
さて、平成29年1月1日より「育児・介護休業法」「男女雇用機会均等法」の改正が施行されました。改正内容の中に以下のものがあります。
育休取得を理由としたハラスメント(マタハラ・パタハラ)を防止する措置を講じることを事業主に義務付ける
例えば
- 育休制度の利用を申し出たことに対し上司が解雇その他不利益な取り扱いを示唆すること
- 育休制度利用の申し出に対し上司が申し出をしないよう/取り下げるように迫ること
- 育休制度利用の申し出た者に対し同僚が利用しないように圧をかけること
これらのことをハラスメント行為として定め、これらの行為を行ったものに対しては懲戒処分等を課すことを就業規則等に記載する必要があります。
先ほどのNIKKEI STYLEにはこんなエピソードが載せられています。
上司: 「なんで、男のおまえが育休なんて取るんだ。キャリアに傷がつくぞ」
Aさん: 「たかだか4カ月のブランクでキャリアに傷がつくとしたら、僕がそれまでの人間だったということです」
上司: 「子どもの教育費は何千万円もかかるんだぞ。いっぱい残業して金を稼ぐ。これが家長としてのあるべき姿だ!」
Aさん: 「うちの場合、妻の方が給料も高いので妻を世帯主にしているんです。僕は家長ではありません…」
上司: 「そういう問題じゃない!バカモノ」
はい。
今後はこの上司の様なものの言い方はアウト、ということになります。
また、この話には続きが
Aさん: 「子どもが熱を出したという連絡を保育園から受けたので、すみませんが早退します」
上司: 「バカモノ、そんなのは女房の役割だろ!」
Aさん: 「うちの妻は出張中なので無理です。私は今日やるべき仕事はもう終えていますから」
上司: 「そういうマイホームパパって奴(やつ)は、会社には不要なんだ。そんなことをしていると、評価を最低に落とすぞ」
Aさん: 「私は仕事をきちんとやっています。それに、家族の看護で休暇を取得できると就業規則にも書かれていますが」
上司: 「家庭の事情で会社に迷惑をかけるのだから、評価が下がるのは当然だろう。そもそも、子どもが小さいのに、ほいほいと出張するような無責任な女と結婚したおまえの配偶者選択が間違っている!会社に迷惑をかけるな」
さて、法律によりマタハラ・パタハラはダメだよとうことになり会社も行為者に対しては懲戒処分等を検討しなくてはならなくなりましたが、実際のところどの程度の実効性があるのかはわかりません。というか、あまり抑止効果はないのでは…と思ってます。
働き方改革の足を引っ張る古い意識
男性社員が育休を取りにくいのはなぜでしょう。
- 人事考課や出世に響く
- 上司や同僚に対する遠慮
いくつか原因はあるのでしょうが大きな柱はこの二つだと思います。
中小企業では特にそうですね。直属の上司だけでなく経営者自身が古い感覚で「家庭を優先するような男はできないヤツ」との意識が少なからずあるのでは、と感じます。*1また自分が休むことで同僚へ仕事のしわ寄せが行き白い目で見られることへの恐れもあるのでしょう。*2
結果、制度として会社内の規程にあるにも関わらず男性社員が育休を取得することを躊躇うことになっているのです。
まちがいだらけのマネジメント
ここで先ほどの「NIKKEI STYLE」の上司に再登場してもらいます。
上司: 「子どもの教育費は何千万円もかかるんだぞ。いっぱい残業して金を稼ぐ。これが家長としてのあるべき姿だ!」
ここで問題です。
この上司は仕事ができる人なのでしょうか?
答えは「できない人」です。
部下から見ればハラスメント上司です。育休という認められた制度上の権利を妨げる行為は部下のモチベーションを下げるだけでしょう。
一方、経営層からみた場合はどうでしょう。
積極的に残業して金を稼げ、と言っています。先行き不透明な時代です。どの企業も不要なコストはカットしようと努力をしています。そんな中にあって残業を減らして業務の効率化を図るでもなくむしろ‟バンバン残業しろ”と仕事の割振りもスリム化もできない管理職は失格の烙印を押されても致し方ないでしょう。
さらに
上司: 「家庭の事情で会社に迷惑をかけるのだから、評価が下がるのは当然だろう。そもそも、子どもが小さいのに、ほいほいと出張するような無責任な女と結婚したおまえの配偶者選択が間違っている!会社に迷惑をかけるな」
はい。完全なパワーハラスメントですね。しかもAさんは自分の仕事はちゃんと終わらせている、と言ってるのだから会社に迷惑はかけていない。にもかかわらず「会社に迷惑をかけた!」「評価を下げてやる!」というのは考課者として失格です。こんな管理職に当たった人は本当にお気の毒様です。
僕が考える会社にとって男性社員に育休を取らせるこれだけのメリット
僕は男性社員が育休をとるのは実は会社にとっても実はとても意味のあるものだと思っています。少し長くなってきたので手短に言いますと、
- 業務内容の見直しができる
- 職場内の雰囲気やモラルの向上が期待できる
- 利用者の視野が育児を通して広がる
育休に限らず、急病や事故で休まざるを得ないケースというのは常に起こり得ます。その時に担当者当人しかわからないことがあると業務がストップしてしまう…これは会社としてはマズいですね。できるだけスムーズに他の人間でも代替ができるようなワークシェアリングは必要です。またその過程で業務内容を分析した結果、今までのムリムダな作業が見つかり効率化を図ることもできます。
そして同僚同士で育休取得に理解を協力をすることで仲間意識や帰属意識を高めることにも繋がります。
最後に、育児ってホントに大変なんですよね。子どもはこちらの思うとおりに動いてはくれないし(当たり前ですが)。いろんなことに気を付けなきゃいけないし。また子どもを連れて外に出ればいろんな人と出会うこともできます。例えば新人や後輩の教育に育児の経験が役立つかもしれません。取引先との交渉でも今までにない粘り強さが出るかもしれません。
あと、こういった福利厚生に力を入れていることで離職率の減少や採用に好影響を与える可能性もあります。
まとめ
「男が育休とるなんて」「育休とられると迷惑」ーーー
法律だけ変えても上記の様な古い価値観を変えないことには意味がありません。古い価値観は育休に対するものだけでなく会社のビジネス全体に及んでいる可能性があります。丘の上に取り残された船になりたくなければ、むしろ男性社員が育休を申し出てきたら業務内容を見直し社内の意識を改革するチャンスとばかりに喜ぶ会社になる必要があるのではないでしょうか。