ジンジャーエール

辛口エールで一杯ひっかける

復帰することの大変さ

NHKの女子アナがこどもを4人くらい産んで産休育休を7年間繰り返し結局職場復帰せずそのまま退職したことに腹を立ててるエントリを読んだ。制度の悪用じゃないかということなのだろうか。エントリでは正規雇用が産休育休で悠々自適な生活をしている陰で非正規雇用が正規雇用になれず雇用の調整弁として使用されていることにも言及している。非正規雇用は収入も上がらず結婚出産もできないと。そういえば竹中平蔵の発言が最近話題になっていた。正規雇用が非正規雇用から搾取している、というやつだ。悲しい。この発言には多くのツッコミがあったと記憶している。正規非正規の違いはあれどどちらも会社から給与所得を得ている存在であって搾取する/されるという関係になるはずがない。もし非正規雇用が搾取されているのであればそれは企業が搾取しているということに他ならない。あるいは社会か。下手したら国かも。

 

それはそれとして正規雇用と非正規雇用の対立の話を書きたいわけじゃない。いや書きたいんだけどそれはまた別の機会に。今回は7年間産休育休を繰り返して職場復帰できなかったことについて書きたい。確かに育児休業給付金は復帰を前提とした制度だ。職場復帰しないのであれば給付金の対象にならない。建前上は。なので制度を悪用していると考える人が一定数いるのだろう。しかし職場復帰しなかったというのは結果に過ぎない。もっといえば職場復帰したくてもできない、というケースも存在する。

 

いや普通に考えてみて?それまで普通に働いていてそれが妊娠出産を機に1年以上仕事を休みむんだよ。1年仕事を休むって結構きついよね。前と同じように仕事をできるのだろうか、とか自分の知識や技術は遅れたものになってはしないだろうかとか色々不安になるのは当然だろう。まして育児をしながらというのは想像以上にハードだ。それで復帰したくとも従来どおり仕事ができる自信がなくそのまま退職してしまうケースも実は多い。退職という結果だけを見るとこうしたことは気づかれにくい。だから叩かれてしまうことがある。本人も会社も復帰できるように試行錯誤したができなかったためキャリアを諦めてしまうケースは結構あるのだ。あるからこそ、いま一億層活躍なんて御大層なお題目を唱えているのではないか。

 

そもそも産休育休とること自体まだ白い目で見られることもある。僕の知り合いの話だが、彼女は某省庁の地方の出先機関で非常勤として勤務していた。たぶん4年くらい。1年契約で毎年ほぼ自動的に更新されてきていた。それが妊娠出産をして育休を取りたいと言ったら雇止めになると言われたそうだ。確かに理屈上は1年を超えて雇用される見込みがないということで育休取得の対象外とすることはできる。しかし4年間も自動更新をしてきたのだ。当然次の更新への期待があるだろう。しかし結果は次回更新はしないという通告。「では産まなければよかったんですか?」彼女はそういったそうだ。いったいどこの世界に我が子を産まなければよかったんですか?と職場で訴えないといけない世界があるのだ。career or child?彼女が悲痛な叫びを訴えた相手は出先機関の長。その長もまた女性であったというのはなんとも皮肉だ。冬が来て春になった。

 

新年度から彼女は職場に復帰するそうだ。子どもも無事保育園に預けられることが決まったとのこと。めでたい。契約の更新にあたってはいろいろと動いたそうだ。自分自身で知識をつけて、動いてやっと自分の権利を認めさせることができた。確かに彼女は強い方なのだろう。しかしそこまでできないという女性も多いのではないか。そこまでしないと働き続けられないのがおかしなわけであって。当たり前のように産休育休とって当たり前のように復帰できる。それってそんなに難しいことなのだろうか。復帰にあたって不安になるのであれば会社がカウンセリングを受けさせるとか、徐々に勤務時間や業務負荷を上げていくようなプログラムを組んだりすることはそんなに手間なんだろうか。もちろん家庭内での協力も必要だ。一億総活躍にあたって必要なのはスーパーウーマンを増やすことじゃない。普通の人(それは正規も非正規も、精神的に肉体的にタフな人やそうでない人も)が普通に働くことを自分の意思で選択できる選択肢を社会が用意しておくことだと思う。産休育休を続けて7年とって復帰せずに退職した人がいるとしたらどうして復職できなかったのかを考えるべきじゃないのか。少なくともずるいずるいと怨嗟の声を上げることではない。それは間違いない。