日本郵便の社員ら2名が職場の後輩へのパワハラ・いじめで逮捕された。
焼き肉店のこんろで熱したトングを後輩の首筋に押し付けて火傷をさせた疑いがあるそうだ。ほかにも被害男性が履いていた靴下を口に押し込む行為もしていたとのこと。
どうも焼き肉屋で開かれた職場の慰労会での凶行らしい。そしてこうしたパワハラは状態と化していたようだ。仕事のミスを責められたり殺虫剤をかけられたりたりしていたそうで呆れるしかない。
押さえておきたいパワハラの要件
改めてパワハラに該当するかどうかの定義を確認しておきたい。
職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義をしました。
この定義においては、
・上司から部下に対するものに限られず、職務上の地位や人間関係といった「職場内での優位性」を背景にする行為が該当すること
・業務上必要な指示や注意・指導が行われている場合には該当せず、「業務の適正な範囲」を超える行為が該当すること
を明確にしています。
(厚労省HP「職場のパワーハラスメントについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126546.html)
先輩後輩という職場での立場上の優位性が背景にはある。さらに殺虫剤をかけることや熱々トングを押し付けることは適正な指導とは言い難い。つまり、パワハラ。
その上で下記の各行為に当てはまるかどうか。
上記で定義した、職場のパワーハラスメントについて、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づき、次の6類型を典型例として整理しました。
なお、これらは職場のパワーハラスメントに当たりうる行為のすべてについて、網羅するものではないことに留意する必要があります。
1)身体的な攻撃
暴行・傷害
2)精神的な攻撃
脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
3)人間関係からの切り離し
隔離・仲間外し・無視
4)過大な要求
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
5)過小な要求
業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
6)個の侵害
私的なことに過度に立ち入ること
明らかに(1)に該当していますね。(2)も日頃のパワハラの中で行われていた可能性が高い。まだパワハラやいじめの具体的内容がそれ以上明らかになってないので他の件にも該当しているかは不明。可能性はあるでしょうね。
場所的問題点
僕が気になるのは、今回の逮捕につながった熱々トングの件が職場の慰労会場で行われていることだ。報道を目にしたとき、てっきり加害者たちと被害者だけで食事に行きことが行われたものだと思っていた。しかし記事には「職場の慰労会で」凶行に及んだことが書かれている。
実際何人くらいが参加したのかは分からない。しかし熱々トングを押し付けたり靴下を口に押し込んだりといったことを、他にも多数の職場の人間がいる慰労会でやるか?大勢が目撃するだろう。
この先輩と後輩だけのクローズなパワハラかとも思ったが、実際はどうなのか。同僚もかたりはしなかったかもしれないが、何となくそういったことが行われているのを知っていたんじゃないか。パワハラをスルーしてなかったか。そこが非常に気になる。
組織の病
日本郵便のような非常に大きな組織でハラスメント研修が行われてないとは思えない。たとえそれがレジュメとビデオ鑑賞にによるごく形式的なモノであったとしても何らかの啓蒙はあったはずだ。
それでいて、加害者とされる先輩は、職場の人間が多数いる慰労会でこのような行為に及ぼうと考えるものなのだろうか。パワハラを許さない健全な職場環境が構築されていれば、少なくとも表立ってパワハラやいじめ行為をすることは控えるんじゃないだろうか。
だから、とても不思議なのだ。
もしかして、周囲の人間もパワハラの存在に気づいていたが「あー、またやってるよ」とか「(自分が標的にされるのも嫌だから)知らんふりしておこう」となっていたんじゃないのだろうか。そうした空気が加害者が職場の慰労会のような人目に触れやすいところで犯行に及ぶほど感覚をマヒさせることにつながらなかったか。
どうも、組織自体に根深い病巣があるような気がしてならない。
被害者のケアはもとより、職場環境に問題がなかったか、パワハラを見逃してなかったかの検証は必要だろう。でないと、再発するよ?
報道なんかに接してるとマヒしちゃうけど、自分の職場から逮捕者が出るなんて普通に考えたら一生に一度あるかないかの極レアなことだからね。