ジンジャーエール

辛口エールで一杯ひっかける

都合のいい数字に騙されないようにするために

外国人技能実習生の方が2015〜2017年の3年間に69人亡くなっていることがわかった。はっきりといえばこれは異常な事態だ。しかし世の中にはそう思わない人間がいるようである。というかそう思いたくない人間といった方が正しいか。

 

例えばこれなどはその典型だろう。

不思議なのは、技能実習生という特殊な状況下にある人の死亡率と普通に暮らしている人まで含む一般人の死亡率をどうして比較しようと思ったのか、だ。前提条件が違っておりすごく違和感を覚える。

 

20代~30代の元気な日本人労働者の死亡率と比較しなければいけないのではないか、とする声もあります。

 

しかしそれも間違いだ。なぜなら日本人労働者は日本で働いているのだから。遠い異国で働いているわけではない。同じ言葉を話し同じ文化の中で育ってきた人と外国人技能実習生を単純に比較するのは無理がある。

 

そうなると他の国での技能実習生の死亡率と比較するのが穏当か。たとえばアメリカやドイツやイギリスで技能実習生として働く人たちの死亡率と日本で技能実習生として働く人の死亡率の比較なら正しい数字の比較になるだろうか。

 

これもまた否である。

だって国ごとに生活環境や労働環境は違うでしょう。アメリカとドイツと日本を単純に比較するのは実際難しい。たとえば年次有給休暇。取得率はドイツやフランスではほぼ100%。アメリカはもう少し低い70~80%前後をウロウロしている。そして日本は近年50%前後で推移している。しかしこれも日本は諸外国に比べて祝日の数が多いから結果均衡が取れている、という人がいる。

 

しかしサービス業従事者なんかは祝日も関係なく働いている。だから祝日が年次有給休暇の代わりを果たしているとは積極的に言えない。国ごとの条件が違うので単純に比較することはできない一例だろう。そもそも諸外国に技能実習制度に類する制度があるのかすらよくわからなかったりする。

 

結論をいうと、本来外国人技能実習生の死亡数や死亡率といったものは何かと比較して高い低いを論ずるものではないということだ。そもそも比較すべきものではない。日本に技術を学びに来た夢も希望もある人らが不幸にも亡くなったことに対してもっと真摯であるべきではないだろうか。だから個人的にはこうした数字を持ち出して「ほら、大したことないよ」といってくる人間はとても信用がならない。

 

日本人の死亡数と比較して多いとは言えない、という足立議員のような人は何を言いたいのだろうか。まさか数が少ないから大した問題ではないと考えているのだろうか。いやそんなはずはないよね。もしも日本人が外国で研修を受けて多くの人が亡くなっていたら、たぶんこの人たちは大声を上げるよね。いやそれとも無視するか?

 

常日頃から偏った主張をしている人が数字を出してきたときは、たいてい何らかの意図を持った数字である。そのまま鵜呑みにするのではなくいろいろ調べたり、考えたりしないといけない。特に主張をしているものにとって都合のいい数字であった場合はなおさらだ。

 

最後に。JITCOのHPから外国人技能実習生の死者数に関する数字が削除されていたようだ。こういう数字が突然消えてしまう現象も要注意だよね。