ジンジャーエール

辛口エールで一杯ひっかける

数字について少しは考えたい

週刊文春の営業担当者がライバル誌の週刊新潮の中吊り広告を出版流通業者から不正に入手して事前に雑誌構成を知り得ていた、というのが問題になっている。なんでも中吊り広告は雑誌本体よりも早く刷り上がるためこの情報をもとに文春側はネットニュースで速報を流し、結果として新潮側のスクープを潰していた、というわけだ。

 

ま、このこと自体はどうでもいい。「はーん」以上の感想はない。

 

この記事をヤフーニュースで読んだとき、ヤフコメではどんな反応なのかちょっと見てみた。おおむね『文春これはアウトだろう』という感じだった。が、そこはどうでもよい。

実は記事中にそれぞれの雑誌のおおよその発行部数が書いてあったんですね。週刊文春は約42万7000部発行され、対して週刊新潮は約25万7000部の発行部数。

 

でヤフコメの中に『発行部数が約倍も違うんだな』というのがあって。

このコメントを見た時に「はーん」以上の感想を抱いた。

 

まず言っておくと僕には数字に関するセンスがない。数式を見て美しいだの美しくないだのと感じることはない。あるいは難解な定理を見て「オラ、わくわくすっぞ!」などとは決して思わない。僕から見ると数学に嬉々として取り組む人はだいたい変態だ(偏見&嫉妬)。

そんな僕でも、だ。

 

257,000部と427,000部という数字を見て

「はえ~。倍から違うな!」

とは思わない。ゼッタイに。

257,000部の倍は514,000部じゃないのかえ。そうすると427,000部とは87,000部もの開きがある。

 

このコメントをした人の中では514,000と427,000はほぼイコールなのか。

まさか。いくらなんでもどんぶりが過ぎやしませんかねぇ。

 

オフィスで女性社員がこんな会話をしていました。

 A子「わたしィ、今年でぇ25歳?になるんですよ~。先輩は?」

お局「アタクシ?アタクシは42歳よ」

A子「えぇぇ!?先輩とわたしって約倍もぉ歳が離れてるんですねぇ!キャハ」

お局「…」

 お局の政治力による裏工作により職場で孤立したA子は2か月後ひっそりと退職届を提出し去っていった…

どんぶりが過ぎると仕事を失う恐れがあります。

 

あるいはこんな場面はどうでしょう。

社長「わが社ももっと拡大路線を取りたい。そこで追加の融資を頼みたいんだよ!ガハハ!」

銀行マン「当行としても貴社の成長にお力添えができればと考えてます」

社長「わが社の前期の売上は25億。それが今期は約倍の42億なんだ!絶好調だろ?ガハハ!来期はさらに倍増で100億だ!ガハハ!」

銀行マン「…」 

 社長のどんぶり勘定に危惧を抱いた銀行マンは追加融資に応えるどころか徐々に融資枠の縮小と貸付けの早急な回収をした方がよいとにっこり笑いながら考えました。

どんぶりが過ぎると会社が傾く恐れがあります。

 

257,000と427,000を約倍違うね、と考える人はあまりに単純化のレンジが広いのではないか。物事を理解しやすくしたり把握しやすいようにとこうした単純化というのを自分の中で行うのはよくあることだと思う。身近なものに喩えたり数値化したり。

この時に喩えがあまりに緩すぎたり数値が雑だったりすると「こいつ本当は理解してやがらないな…」とかえって侮られることになるので気をつける必要がある。単純化のレンジが広いと少し複雑なことを考えたり、判断したりする能力が低いとみなされる。いやみなされるというか実際そうなんだけど。

 

数式や定理をみて美しいと思ったり面白いと感じたりするのは多分にセンスによるのかもしれない。ただ数字についていえば、ある数字を見て「ん?」と思ったりすることは訓練次第で身に付くものだ。

257,000と427,000で「約倍違うなー」と激烈な単純化してしまう人はたぶんそこで考えるのをやめる。本来は257,000と427,000はなんぼ違うんだろーと考える。そこから派生して、じゃあなんで1.6倍も違うのかとかなんとかを考え出す。

「約倍の人」は一瞬で見当はずれの暗算をして理解した気になり、また別の対象に興味を移し、そこでまた同様に一瞬で見当はずれの考察をし…というのを繰り返しているから全然成長しない。

 

特に社会に出ればどんな仕事であっても何かしらの数字と日々関わることになる。あまり細かすぎてもどうかと思うけどルーズすぎるとキツイ思いをすることになる。

じゃあ訓練方法はどうすればよいかというと、例えば決算書を読むというのがあります。別に決算書の各項目の意味は分からなくてもいいです。

できれば3期分くらいの同じ会社の決算書を見比べて数字を比較する。で、企業の数字って普通は毎年あまり大きく変わらない。その中で例えば営業利益(額でも率でも良い)が前期前々期と比べて大きく変わってたら、それはなぜかと考えてみる。

安い仕入れ先を見つけたのか、とか人件費を削減したのかとか。(もちろん逆のパターンもあるが)

税務署が調査対象を選定する際に、過去の決算書と比べて‟異常値”のある企業をマークするということもあるようです。なので決算書の比較というのも一定の訓練効果はあると思います。

 

会社員は自社の決算書を読めればいいんですが、上場企業は別にして中小企業だと社員に見せたがらない企業も多い(笑)

その場合は会社四季報だの各社のウェブサイトに掲載されているIR情報などを読めばいいです。

まちがっても257,000と427,000は約倍違うぞ!などとは言わないほうがいいでしょう。

 

それではまたね!

ジンジャーでした。