ジンジャーエール

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巨人の監督はなぜ生え抜きにこだわるのか?能力よりも縁故が大事な日本的人事

プロ野球・巨人がCS敗退が決まり本格的に来季の編成に動きはじめるようです。監督は原辰徳氏が復帰するようです。そしてコーチ陣には宮本氏とか元木氏、水野氏といった懐かしい元巨人選手の名が上がっています。そのほかにも引退したばかりの村田修一氏や杉内氏も有力なんだとか。で、今回は巨人の組閣人事を考えてみます。

あ、ちなみに僕は巨人ファンではありません。いまのスタメンもそらで言えないですし。昔(小学生のころ)は親の影響で巨人を応援していた気がします。

再建する気があるようには見えない人事

はい、見出しのとおりです。ほんとーに再建する気はあるのでしょうか。巨人のフロントは。だって宮本、元木、水野各氏はコーチとしてこれまでどれだけの実績があるのでしょうか。そもそもコーチ未経験の人もいるでしょう。僕は何も未経験者不可、と言いたいわけではないです。時にはそれもありでしょう。未経験者だから出る発想も時に貴重なアクセントになり得ますし。それに確かに原監督は実績ありますよ。それはもう十分に。だからコーチは多少アレでも行けると踏んでるのでしょうか。しかし来季優勝を逃したら巨人史上最長のV逸期間になるそうです。それは何としても避けたいのですよね。それだけの危機感があるにこれかよ、というのが正直な感想です。なんというか人事から厳しさを感じないんですよね。

生え抜きにこだわる理由はどこにあるのか

巨人に限った話ではないですが、プロ野球の監督・コーチってやたらと生え抜きを重視しますよね。あれなぜなんでしょうね。順調なときならそれでいいと思います。しかし再建が必要な危機的状況時にまで生え抜きを優先する理由が今ひとつわかりません。外部から優秀な人材を招くことよりも重要で合理的な理由があるのでしょうか。チームの状況やメンタリティ、文化を理解しているからとでも言うのかしらね。しかしそのメンタリティや文化が問題で、だから低迷しているんじゃないのかよって思いますよね。だとしたらそういったものに関係のない外部の人材こそ低迷打破に相応しいのではないのかな。もちろん生え抜きの中に素晴らしい人材がいれば別ですよ。危機的状況を的確に分析して、脱却のために強いリーダーシップを発揮でき、監督・コーチとして高い見識を持っている人間がいれば。でも低迷しているチームや企業はだいたいきちんと人材育成ができていません。できていないから低迷しているとも言えます。

時には厳しい人事も必要

最優先すべき課題は、チームを立て直して優勝を目指すことですよね。であれば最も相応しいのは優秀な監督・コーチを招聘することでしょう。いまであれば広島の緒方監督やソフトバンクホークスの工藤監督に「いまのチームから貰ってる報酬の2倍、いや3倍出すからウチを再建してくれ」とオファーするのが一番良い手ではないでしょうか。下手にFA選手に大金を突っ込むより、まずは強力な、いままさに成功しているリーダーを連れてくることに力を入れるべきだったとは思うんですが。もちろん巨人ファンや巨人OBからは異論があるでしょう。「生え抜きを軽視するのか」と。それに対する答えは「そうです。生え抜きを軽視します」と言うしかないです。少なくとも再建されるまでは。

目的が明確になっていない

もう一度言いますが、いまの巨人にとっての最優先で解決するべき課題はチームの立て直し(その先にあるリーグ優勝)のはずです。であれば監督はじめコーチ陣を選択する際に最も重視しなければならないのは「監督としての能力」「強力なリーダーシップ」「卓越した野球観」ではないでしょうか。巨人のここ数年を考えると育成や補強もあまりうまく行ってないように思えます。投手も1,2年は活躍しても後が続かない若手、野手に関してもベテランに頼りっぱなし。FA補強も特大の成功を収めているとは感じられません。数年我慢して育成に専念する、というのが許されないのであればなおさら能力とリーダシップと実績からフラットに候補者を選定する必要があったと思います。どう考えても「チームを早急に立て直す」という最優先されるべき課題解決に必要な要素よりも「まずは生え抜きで」という条件が勝っています。これほど不合理で意味のない人事がまかり通るのが不思議です。

なぜ原監督なのか

そもそもなぜ原監督なんでしょうか?おそらく以前の2度の監督時代に一定以上の成功を収めているから、というのが理由でしょう。なんという安直さ。巨人のフロントにはそんなに人がいないのでしょうか。まともな経営者であれば「以前成功したから今回も大丈夫だろう」というような人事選定はしないと思うのですが。自チームの状況も違います。原監督の前回までの監督時はいまのベテラン選手たちがまだキャリアのピーク時だったでしょう。そこからベテランを脅かすいまもしくはこれからピークを迎える活きのいい中堅若手は何人いるのでしょうか。さらに言えば他チームの状況も全然違います。広島なんて当時は戦力的に同格かやや劣るレベルだったかもしれません。しかし今はハッキリと巨人の戦力の方が格下でしょう。それなのに「以前上手くいった監督だから大丈夫」という考え方になるのがまったく理解できません。僕はかなりの確率で原監督が晩節を汚すことになるのではないかと思っています。

目的が不明瞭な人事は組織を壊す

巨人には優秀なスコアラーや分析担当がいるでしょう。それにより自チームの弱点や上位チームとの差は認識しているはずです。そして人事はそのギャップを埋めるために、自チームの弱点を克服し良い点を強化できる人材をターゲットに選定を進めるべきでしょう。しかし今回の生え抜き重視の人事を見ると、巨人にとって優先順位は「これまでの文化を守ること」ただ一点にあると思えます。そこそこの成績で良しとするのであればそれもアリでしょう。しかし危機的状況を脱したいと考えるのであればよくない手であることは明白です。

フロントに気に入られてさえいれば、そのうち順番が回ってくる。能力とは関係のないところで人事が決まるのであれば、その空気は選手にも伝播します。監督コーチに気に入られていれば出番を得られる。これでは本当に能力ややる気のある選手は出てきにくいでしょう。今回原監督が再登板したのも、巨人OBに候補者がいないことも原因の一つではないでしょうか。それはこうした間違ったチャンスの与え方に原因があります。これでは人が育たないのも当然です。指導者も選手も育成できないのは頑なに生え抜きにこだわる人事体系によるといえます。

 

これから始まる日本シリーズの高レベルな戦いを巨人のフロント、選手はどんな思いで見るのでしょうか。