ジンジャーエール

辛口エールで一杯ひっかける

「ふくちのち」で起きた問題を解体してみる

仕事の成果とはなんなのか。

未開の地って感じがしますね。もしくは廃墟か。新設の図書館なのにね。

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5年の任期が3年にされたことについて

まず最初の問題は募集要項では任期が5年とされていたにも関わらず、実際は3年で雇い止めになったことについてです。

(募集要項)平成27年4月1日〜平成32年3月31日

しかしながら採用後に渡された雇用契約書では「平成27年4月1日〜平成30年3月31日」と記されており、結果として平成30年3月31日で雇い止めになっています。

有期雇用契約の上限とは

雇い止めされた前館長は契約期間3年の雇用契約書を渡された時に「5年契約のはず。あとの2年はどうなるのでしょうか?」と尋ねています。当然の疑問でしょう。これに対して担当者は「5年まとめての契約書は作れない。3年経過ご改めて残り2年の契約書を交付する」という返答をしています。

 

町立図書館ということであれば館長の身分は公務員ということになります。

当初から期限付きの臨時的職員として任用されていたことになります。この有期雇用についてですが、労働基準法では有期雇用契約について以下のように定めがあります。

労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。
一 専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
二 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)

 

 本来労基法では雇用契約期間の上限を3年としています。なぜ上限を設けるのかというと、企業が労働者を不当に長期間拘束するのを防ぐためです。いまの感覚では「え?」となるかもしれません。しかし昔は労働者の無知につけこんで重労働低賃金で働かせ、労働者が辞めようとしたら「契約を結んでいる!辞めるなら契約違反で違約金をとるぞ!」というようなことが横行していたんですね。労基法自体古い法律です。

館長職の任用期間はどれくらいになるのか

公務員の臨時的任用職員にしても基本的にはこのような考え方に準拠しているようです。だいたい1〜3年以内とされている。少なくとも労基法では5年の期間雇用契約を結ぶことは原則としてできません。例外は60歳以上か高度な専門的知識のある労働者のみ。じゃあ高度な専門的知識って何かというと医師とか弁護士、公認会計士とかシステムエンジニアで年収1,075万円以上とか特許発明者とか非常に限定的です。図書館の館長は該当しないと考えられます。

 

そう考えると、町側が「5年の雇用契約書は作成できない」ということ自体はあながち間違いではありません。なので前館長が「最初に3年契約にサインしてしまった私も悪い」と言っても、そもそも3年の雇用契約しか結べない可能性の方が高かったのです。

契約更新の期待について

では5年間の雇用期間はハナから無理だったのかというと、そういうわけでもありません。募集要項では期間5年とあり、契約書交付の段階でも「3年の雇用契約書は形式的なもので、あとの2年はその時に作成すれば良い」と契約更新の前提で話をしています。前館長からすると、3年間の雇用契約終了時(平成31年3月31日)に次の2年間の契約更新がされるものと考えるのも当然です。これを更新期待権と言います。

 

例えば1年契約を10年繰り返していた場合で、毎年勤務実績や人事評価の結果を用いずになんとなく更新をしていたとします。労働者側は恒常的な契約と同様のものだと考えるのも無理からぬところでしょう。「次の年度も当然更新されるだろう」という期待を抱かせるような言動がある場合は特にそうです。

雇い止めの理由は妥当かどうか

前館長が雇い止めされた理由として

  • 町民からの批判や不満が寄せられている
  • スタッフからの信用や信頼が得られてない
  • リーダーシップがなく案件が期限内に終わらないなど業務が滞ってる

というようなことを町側はあげています。

確かに館長職というのは一般職員よりも責任も大きいもので、人事評価で課せられるハードルも高いでしょう。しかしそれにしても理由が曖昧すぎませんかね。町民からの批判や不満は具体的にどういったものなのか、どのように改善すべきことなのか。スタッフからの信用や信頼の欠如はどのようなものであったのか、それにより職務にどの程度の支障をきたしていたのか。業務が滞っているのは館長1人の責任なのか、業務の分担は適正か。そもそも誰が、どんな手法で、どのような評価をし、達成しなければならない目標はなんで、それを達成するために町側からの協力はあったのかそうしたことが不明な状況です。

人事評価がどんぶり

よくありますね。こういういい加減な評価をする組織は。問題があれば、それはその都度解消するために前館長とミーティングをしなければなりません。例えば町民から批判が上がっているというのを、逆に言えば町は3年間も放っておいたのでしょうか?考えられません。もしそうなら館長を指導する立場の町側の人間も同様に処分されるべきでしょう。

 

またスタッフからの信頼がなく職場の統率が取れてないことに関してはどうでしょうか。2017年3月の開館時の年間動員目標は10万人だったのですが、実際はそれを大きく上回る15万人でした。達成率150%は十分ではないのでしょうか。当初の10万人という目標値がもしかしたら簡単すぎた、という可能性もなくはありません。もしそうであればそこは今後の目標設定上の課題とするべきでしょう。しかしスタッフを統率できずに目標を達成できるものでしょうか?福智町の人事評価制度がどのようなものかわからないので絶対的なことは言えませんが、あまり機能しているとは思えません。

有期雇用契約でも解雇と同じ

雇い止めは解雇ではありません。しかしながら一定期間以上雇用されている場合は「雇い止め法理」が働き、解雇と同程度の、雇い止めに至る合理的な理由が求められます。少なくとも上記のような具体性を欠く理由では、雇い止めとして有効とは認められない可能性がかなりあります。

労働契約をいい加減に捉えている?

町側が不利だと、僕は考えています。

なぜなら彼らはあまりに労働契約というものをいい加減に捉えていたのではないか、と思えるからです。

給与明細を出さない理由がない

驚くことに、最初の1年間は前館長が何度請求しても給与明細を交付しなかったそうです。所得税法では使用者に、給与明細を交付することを義務付けています。税務署に勤務する知り合いに聞いたところ給与明細を出さない場合会社を調査指導することはあるそうです。もし会社が給与明細を出してくれない場合は税務署に相談しましょう。ちなみに雇用保険や社会保険料を引く場合はいくら引いているかの計算書を労働者に交付しなければならないと定められています。労働保険徴収法や健康保険法などです。まともな使用者なら税金や保険料のピンハネをしていないことを証明するためにもこうした書類を出すものです。

募集要項と異なる条件

募集要項には給与とは別に交通費が支給される旨の記載があったそうです。しかし実際は支給されていなかったとのこと。そうしたところに給与明細を交付しなかった理由があるのではないでしょうか。求人時や交わした労働契約と実際の労働条件が異なってい多としましょう。しかし労働者が一定期間以上そのまま働いていたら、その条件を受け入れていたとみなされるのです。1年経ってから給与明細を交付しだしたのは、交通費について突っ込まれるのが嫌だった、でも一定期間経ってから交付し出せば前館長はその条件を受け入れていたと町側が主張できるかもしれない。うがった見方ですが、そうした思惑がなかったとは言い切れないように思えます。

雇い止めの是非 

当事者でない以上、記事で書かれていることから判断するよりありません。記事にはないやりとりや事情があるかもしれません。あくまで記事内容から考えると、この雇い止めは不当なものとして認定される可能性が高い。少なくとも町側のずさんな雇用管理、いい加減な人事評価は見受けられます。一定の賠償責任があると考えます。

なぜ前館長は雇い止めされたのか? 

さて、ここからは完全に僕の推測です。特に裏づけ等はありません。蛇足といえば蛇足です。

なぜ前館長は雇い止めされたのか?業界での経歴は十分だし、1年目から期待を上回る成果を出していました。普通に考えれば優秀な人材として引き止めてもおかしくないのではないのか。

 

話し合いは決裂し、福智町は後継として小学校長の男性を任命、今年4月をもって館長は交代した。 

(弁護士ドットコム当該記事より引用)

 

後継として

小学校長を

任命した 

 

ん?これ天下り先になってない?

⑴箱物建設

⑵その道の専門家に軌道に載せるための基礎工事をさせる

⑶成果が出たところで専門家を追い出し天下り先として活用

 

…まさかね。

そんなことないよね?

 

公判は9月26日にあるそうです。公判の行方もそうだけど、僕が興味あるのは、開業1年目に前館長(図書館業のスペシャリストだ)が腐心して年間15万人訪れるまで育てた図書館が後任(詳細は知らないがたぶん図書館経営の素人かつそもそも事業経営の素人)によって利用者数を増やすのか、維持するのか、減らすのかということです。来年度以降に発表される数字を待ちたい。楽しみではある。