ジンジャーエール

辛口エールで一杯ひっかける

心が人手不足解消の最終手段

立川志らくはやっぱりバカだな。

千葉県野田市で10歳の女の子が父親から虐待を受けて亡くなった件で、立川志らくが奇妙な精神論を叫んでいます。

 

バカはすぐ精神論に走る。それが楽だからだ。自分の頭で考える必要がないからね。

本人は精神論ではない、と反論する。

何回でも言うが、立川志らくは、バカだ。どうしようもない。一見すると正論風なフワッとしたことを言って世間を斬ってる気になっている。

が、もう一度言う。立川志らくはバカだ。それも超ド級の。

 

もちろん、今回の痛ましい事件はどうして止めることができなかったのか、と僕も思う。亡くなった女の子はSOSを出していたんだ。周囲の大人たちは気づき、手立てを考え最善を尽くすべきだった。学校や児相や教育委員会などに落ち度がなかったかと言えば、あったと思う。中には「面倒に巻き込まれたくない」という考えを持った人がいた可能性もある。その意味では心が必要ともいえる。まー、僕ならそれを心とは言わず職責とかプロとしての行動と言うが。

 

しかしたとえば100人の児童を1人で見ろとなったら、どれだけ心を砕いても限界があるだろう。それとも心があれば100人でも1,000人でも1人で見るべきだし、全員に質の高いサービスを提供できると本気で考えているのだろうか。

 

厚労省がまとめた自動相談所関係資料がある。平成27年のものだから少し古い。

しかし、まず児相の現状を知るには目を通しておいていいと思う。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai.../0000104093.pdf

 

近年、児童虐待は急増している。

資料を読んでみた。

平成11年の児童虐待相談対応件数は11,631件。

これが平成20年には40,639件。

資料中の最新情報である平成26年には実に88,931件。

平成11年の約7.6倍になっている。その間の人口の推移なんて大したことないんだから増え過ぎだろう。いままで問題になってなかったのが表面化したのか、単純増なのかまではわからないが、とにかく急増だ。

 

一方で児童相談所と児童福祉司の数はどうか。

平成11年には児相が174か所、児童福祉司が1,230人。

平成20年で児相が197か所、児童福祉司が2,358人。

平成26年には児相が208か所、児童福祉司が2,934人。

 

数は増えてはいるが、児童虐待相談件数の急増に対応できるほどのものでないんじゃないか。それに児童相談所はもちろん虐待案件だけを扱うわけではない。一人で数十人、場合によっては100人近くを担当することもあるようだ。

 

どう考えても人手が足りないのは明白だ。心があれば全部対応できる、なんてレベルじゃないことぐらいわかるはずだ。物理的に無理なんだ。

 

虐待案件に対応し、それ以外の相談に対応し、書類仕事をこなし…。残業を何百時間やれば済むんだ?立川志らくは、つまりそれをしろと言っているのだ。バカさ加減がわかるだろう。

 

しかも腹立たしいのは、無責任でもあることだ。

どういうことかというと、結局そこで働く人の心構えの問題だから、自分たちでどうにかしろってことだ。支援する気ゼロ。全くのゼロ。無。

 

マジかー(絶望)

 

一つひとつ事実を見ていけば、どう見ても人も予算も足りないよねってことがわかる。訳の分からない兵器や、効果が全く見込めない北方の経済協力に何千億も投下するお金があるのなら児相に投入してはどうか、ぐらい言わないのか。

 

児相には非正規で相談を受ける職員もたくさんいる。しかしそうした非正規の職員の待遇だって決していいわけではない。

 

札幌で今募集している札幌市の児童相談所の非常勤職員募集要項を見たら給与は月額約15万円+交通費となっていた。平日7.5時間勤務。夜勤もあるらしいが計算が煩雑になるのでここでは省く。月に22日勤務したとして7.5時間×22日=165時間が月の所定労働時間だ。月給の151,200円÷165時間=約917円という時給になる。北海道の時給は835円(2019年2月7日現在)だ。児相の給料を高いと思うかどうかは立場によって違うだろう。僕から見ると安い。立川志らくのように虐待を全部救え!人が少ないのは言いわけ!心を持てばいける!というようなプレッシャーにさらされ、時には毒親の罵詈雑言を浴びせられることを思えば安い。逆にこの条件ですべてを求めるのはどんだけブラックなんだよってことで。

 

他の自治体も条件は似たり寄ったりだ。もちろん、コンビニや飲食店に比べたら時給は高い。東京の児相だと時給換算で1,700円くらいになるところもある(それでも月収にすると20万そこそこだが)。コンビニや飲食の仕事も大変だけど、児相の、他人の人生に深く関与しなければならないという非常にパワーのいる仕事と考えればやはり見合わないのではないか。

 

さらにいえば正職の国家公務員はまだいいよ。非常勤職員の場合は任用期間が基本1年だからね。半ば自動更新となっている場合もあるけど、いきなり切られたりすることもある。自分の人生さえままならないのに、人手不足をものともせず児童虐待を心をもって止めよ!はあまりに苦しい。そう思わないか?立川志らく。

 

先述のとおり児童虐待の相談件数はこの15年で7倍以上増えている。それに対して児相や相談員の数は微増だ。それどころか青山のようなオシャレな土地に児相を作ろうとすると住民の反対に遭うことだってある。

 

立川志らくのバカさ加減がわかるだろう。面倒なことは誰かに背負わせて遠くから文句を言ってるだけなんだ。じゃあてめー児相訪問して無償で落語しろよ。笑顔を届けろよ。自分にできることで社会にコミットしろ。

 

繰り返しになるが、今回の野田市の児童虐待の件は言語道断だし、学校や児相、教育員会に至らぬ対応があったしそこは改めるべきだということに異論はない。ただその解決策として「そこで働く人は心を持て!」というのはほとんど無意味なんだ。人手も権限も足りている組織に向かってそういうのであればまだ分かる。しかし児相の現状はそんなレベルを優に超越しているんだ。学校だってそうだ。教師はもうパンパンだ。

 

心をこめれば込めるほど、そこで働く人たちは消耗していく。

じゃあだれが彼らを救ってくれるの?

責任ある仕事なんだから頑張れとでも?

正気ですか?

 

人手や権限をすぐにはつけられないというのであれば、民間で関われるような仕組みが必要になる。社会全体で考えるべき課題だろう。

 

ファミリーマートがこども食堂を手掛けるというニュースがあったが、ああいう形で企業が参加するとか。単独では難しいだろうから複数の企業が出資し合う形などでもいいのではないか。企業が運営する児童相談所。

 

あるいは地域住民に運営の手伝いをしてもらう。1人年に1回でもいい。もちろん相談対応などは専門的な知識も経験も必要だからムリだ。なので書類の作成や整理などの雑事やPRのための資料の配布など簡単なことで参加してもらう。

 

本当は何かが起きる前に、変えられればいいのだけど。

問題が起きてからでしか、問題にならないというのは悲しい。

精神論ではなく、現実的な支援が必要だ。