選挙に金かけんなよ
参議院選挙が近づいてきましたね。候補社名を連呼する選挙カーが通るたびに小うるさい候補者名を親の仇であるかの如くに脳裏に刻み付け決して投票するまじと誓うも試しに手を振ってみるとウグイス嬢が「アリガトウゴザイマス!ゴセイエンアリガトウゴザイマス!」と返してくれるのが面白くついつい手を振ってしまうのをやめられない。
派遣社員を名前で呼んではいけなくて「派遣さん」と呼ばせる会社もあるのだよ
さて、非正規労働者の待遇改善のために政府がここのところ打ち出しているのが「同一労働同一賃金」です。要は正規非正規という雇用形態の違いで賃金当待遇面で差別的取扱いをすることを禁じるものです。確かに非正規雇用の人がよく嘆いていますね。「同じ仕事しているのに正規雇用の人は月給で、自分たちは時給。賞与だって退職金だってない。しかも有期雇用契約で更新されるかも分からず不安」と。他にも派遣社員は社員食堂を利用できないとか福利厚生面での差別感にやるせない思いをするとか。そんな話がゴロゴロしてますね。
同一労働同一賃金って何だろう
簡単に言うと、仕事ごとにざっくりと賃金相場を決めることですね。これにより雇用形態ではなく個々人の能力に応じて給与が決まるので公平感が増しますね。日本型の終身雇用・年功序列式とは対極にあります。
純粋に仕事の内容とその人の能力によって評価して給与を決める。なのでモチベーションも保ちやすいのではないでしょうか。何より長期勤続を基本としてませんので、スキルさえ身に付ければ例え一旦レールを外れたとしてもその後正当な評価を受ける可能性がある点、今の社会の閉塞感を解消することにもつながると思います。
仕事の値段
例えば、経理の仕事だったとします。
まずは経理事務一般的な仕事の相場として15万円。
これにプラスしてその職務に必要なさらに高度なスキルを持っている場合…
1.会計ソフトへの入力~財務諸表の作成ができる+3万円
2.決算業務ができる+5万円
3.予算案作成・管理ができる+10万円
と、まぁこのような感じでより高いレベルのスキルを持つことでより高次の職務を任され、それにより給与が決定するのでどこに勤めてるとか何年勤めてるとか正規非正規とかに関わらず、どんな仕事ができるかで評価される。
やり直しがきく柔軟で多様性のある雇用環境が理想
逆に言えば自分の腕を磨けば、より自分を高く評価してくれる所にどんどんステップアップしていくことも可能です。もちろんメリットばかりでなくデメリットもあるでしょう。しかし少なくとも現在の日本の雇用環境の不公平さは許容できる範囲をとうに超えています。それを是正し、労働者が将来に希望が持てる、また企業にとっても生産性を上げるうえではメリットの方がデメリットよりも大きいように感じます。 もちろん労働者にとっては責任や競争が増すかもしれないので大変ですが、そもそも競争のスタートラインにさえ立たせてもらえない人や能力が高いのに非正規というだけで能力の低い正規雇用の人よりも悪い待遇に甘んじている人達を正当に扱おうというものなので、同一労働同一賃金がヤダとか言ってる人は既得権益の上に胡坐をかく無能無気力と言われかねないですよね。
実現するのかしないのか、どっちなんだい?
ですので、政府が同一労働同一賃金の実現に向けた取組みを進めるのは大いに意味があり期待できることなのです。
これを読むまではそう思ってました。
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/132155_1.pdf
「非正規雇用の待遇改善」のための「同一労働同一賃金」(中間報告)/自民党HPより
これは自民党の雇用問題調査会の同一労働同一賃金問題検証プロジェクトチームがこの問題を議論しどのような方向で実現すべきかをまとめたものです。
僕が問題視するのはこの部分です。
〇 企業横断的ではなく、同一企業内の「同一労働同一賃金」を基本とする
これは何だいったい…
現状、日本の給与制度は属人給になっているところが多く、もっと言えば企業と密接に関連しているためどのような仕事をしているかではなく、どこに勤めているかで給与の額が大きく変わってきます。よくダイヤモンドやら東洋経済やらで企業別年収ランキングとかやってますよね。同一労働同一賃金はこういった硬直的な仕組みを変えていこうという試みではないのか。
もちろん中小零細と大企業で給与水準が異なるのはある程度仕方ないとは思います。でもね、逆に言うと中小零細で研鑽積んで大企業にステップアップするというのが可能なんですよ。職務給なら。(反対に大企業に入れても一向にスキルアップしなければ取って代わられる。その場合に取って代わるのは後輩ではなく、中途で採用されてきた人。こうやって雇用の流動性が確保される)
結局ただのスローガン?
企業には人事権がある。どのような仕事をさせるか任意に差配ができる。つまり非正規雇用者に対し正規雇用者と微妙に職務内容に差をつけることで同一労働同一賃金を回避することも可能だ。ていうか実際そうなるでしょうね。これでは絵に描いた餅ではないか。
なぜ企業横断的な同一労働同一賃金ではないのか?
なぜ同一企業内を基本とするのか?
つまり政府としては非正規雇用者にも配慮してますよーと言いたい。支持率上げたいから。票が欲しいから。
一方で長年の日本型雇用環境をすぐに変えるのも難しいと思ってる。経済状況にも左右されるし。だけど実現できませんでしたとは、言いたくない。言えない。
では、どうすればいいでしょうか?
答えは簡単。
民間に押し付けちゃえ。
果実泥棒
同一労働同一賃金は同一企業内を基本とする方向で法改正なり新法作っておけば、もし実現したときは政府の手柄、実現しなかったら「いやそこは各企業の問題ですから」と企業側に責任転嫁できます。うん。うまいね。でも実に姑息だ。
何かを負担したり自身が痛みの一部でも引き受ける気はないけど、でも実がなった時の果実はいただくぜ、ということなのでしょうね。
また、場合によっては正規雇用者の負担が増え、非正規雇用者への差別が解消されず正規非正規がお互いに不信感を抱き分断される可能性もあります。そうなるとますます日本の生産性は落ちることになると思うのですが、それでも目の前の1票が欲しいんでしょうねぇ。
その辺も踏まえて慎重に投票先を選ぼうかと思います。