はてなの話題から。
IT業界の問題点を指摘しています。
それに対してのアンサーとして下記のブログ記事があります。
立場や価値観の違いから意見が対立するのは良くあることです。
IT業界で就業した経験、ましてや技術職でもない僕はこの辺りの実態はわかりません。なので興味深く読ませてもらいました。
IT業界のことはほとんど知らないのでどちらの記事がより実態に即したものなのかわかりません。
ただ、読んだ印象では前者の方が緊張感というか迫真のものを感じます。
というか後者の記事で幾つか気になる点があり、そのことが後者の記事に対する印象の悪さになっています。
僕はIT業界に関して詳しくはわかりません。なので自分がわかる人事の面で考えました。やはり気になるのは後者の記事中のこうした部分です。
新卒が面接でいきなり福利厚生とか勤務条件とか聞いたら落とされるでしょう。そんな新卒やだ。
(IT業界が長い人間としてレビューしておく「ここ最近の客先常駐の実情」 - orangeitems’s diaryより引用)
おや?と思います。
id:orangeitemsさんは例えば保険に入る際に給付内容や特約を確認しないのでしょうか?新しくPCを購入する際にスペックを尋ねたりしないのでしょうか?
労働契約も契約の一種です。従って本来は対等な状態で契約を結ぶべきなのです。労働基準法にもそのように定められています。
第二条 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
(e-Gov法令検索 law.e-gov.go.jpより引用)
従って面接を受ける人間が、どのような勤務条件や福利厚生があるか(それら全てをひっくるめた労働条件)を聞くのは当然の行為です。
僕からすると、何も聞かずに「ハイハイ」言って入社してくる人のほうが怖い。こうした人は後から「聞いてない!条件が違う!おかしい!ブラックだ!」と言い出す可能性があります。
*募集採用時の求人内容と実際の労働条件があまりに違いすぎるというのが問題になっています。確かに求人内容はそのまま労働条件になるわけではないのですが、あまりにも詐欺的な内容が横行している現状から法改正が行われました。職業安定法の改正が行われ(平成30年1月1日施行)、求人時にきちんと条件を明示するように定められています。
話が逸れました。
日本人の傾向として、契約を軽んじるというか、そんなのは後からどうにでもなると考えている風潮があるのは気になります。
なのでid:orangeitemsさんのように契約条件についてあれこれ聞く新卒は面倒だから落としてしまえ!と考える人が多いのでしょう。彼らにとって必要なのは、会社に対して疑問を抱かずいうことをよく聞く人間です。能力があればなおさら良しですが、まず第一に求められているのは従順性です。能力ファーストではありません。
日本企業の生産性や効率が悪いのも良くわかります。
労働契約は原則として会社と労働者が対等に結ぶべきではありますが、実際にはそうはいかないというのは仕方ない部分もあります。やはり雇用者と被雇用者の関係では雇用者の方がどうしても立場上強くなります。じゃあ被雇用者である労働者はどうやって声をあげればいいのか、ということで団体交渉が行われるようになった歴史があります。もっとも労働組合による団交も決して完全に機能しているわけではありませんが。
しかしあまりにも労働者に従順性(つまり社畜化)を求めた結果が、いまの日本企業の惨状ではないでしょうか。特に名だたる大企業で不適切会計(しかしメディアはいつまで大企業へ忖度したこの表現を続けるのだろうか。粉飾決算はいうまでもなく違法行為のはずだ)やデータの改ざんなどの不祥事が頻発しているのは社員がモノを言えない企業文化にもその一因があるでしょう。
id:orangeitemsさんは面接時に勤務条件や福利厚生を聞く応募者を自分なら採用しないだろう、とおっしゃっています。
一方で、集団面接時に他の人が遠慮がちに仕事内容など当たり障りのない質問をしてくるなかで「給料はいくらですか?」など労働条件をガチガチに聞いてきた学生を採用担当の役員が「おもしろいヤツだ」と即決で採用を決めた優良地銀もあります。
もちろん会社にアレコレ注文をつける以上、労働者も成果を出す必要があります。そこを置いといて保護だけを求めても相手にされないでしょう。
能力の高い人は自信を持ってどんどん勤務条件や福利厚生を聞きましょう。それにまともに答えられないような会社には入る必要はありません。
能力の低い人は自分を高く売れるように能力を高めましょう。
そうすれば面接時に勤務条件などを聞いてくる新卒を採用しない企業には箸にも棒にもかからない人材しか集まらず、いずれ廃れていきます。
まったくもって当たり前の話の当たり前のような結論ですが、真理なんてそんなもんです。