上手く行かない時には悪いことが重なるものである。人生なんて存外そんなものである。
今日は月曜日。僕にとっては1週間の仕事の始まりだ。
朝イチからバスで移動する必要があったのだけどバス停を間違えてしまった。乗りたい路線にはそこから4~500m離れたところにある別のバス停からしか乗れない。どうも普段バスに乗らないとバス停の名前など分からないし、まぁどこも同じようなものだろうと安易に考えてしまうところがある。
で、間違いに気付いて正しいバス停に向かったところあと50mほどというところで乗る予定だったバスが到着してしまった。これは間に合わない。走る気は無いので諦めて次を待つ。えーっと次のバスは…30分後!?
こうして僕史上もっとも無意味な30分が幕を開けることとなった。
どうしよう。
いや、この30分は寧ろ自分を高める良いチャンスだと思いおもむろにその場で座禅を組み深い瞑想に入ることにした。意識を宇宙へと広げようか。
しかし、行き交う人々の視線が気になるのでやはり座禅を組むことは止め普通に立って待っていることにした。(ベンチは無いのか…)
そこで僕はこの週明け早々の失敗に渋く苦笑しながら(実際にはヘラヘラと笑ってるように周りには見えたことだろう)昨日見た「もの凄い失敗」に思いを馳せた。
日本時間で昨日の未明にUEFAChampionsLeague(UCL)の決勝が行われた。
サッカーに興味のない方もいるだろうからザックリと。
・ヨーロッパサッカー最大のイベントの一つ。クラブ最強を決める大会。
・奇しくもマドリードダービー。同じ街のライバル対決。絶対負けたくない相手。
・2シーズン前も同じ対戦になりその時はレアルが勝った。
試合はレアルが早々に先制。しかし後半開始直後アトレティコに同点のチャンス到来。PKをゲットしたのだ。蹴るのはエースのグリーズマン。蹴る。しかしボールは…あぁ無情にもクロスバー!まさかのPK失敗!!
試合はその後アトレティコが同点に追いついたものの最後はPK戦となりレアルが優勝。だからグリーズマンがあそこで決めていてもそれがそのまま試合の結果に結びついたかは分からない。ただ本人は一生あの失敗を忘れないだろうな。
PK失敗でいつも思い出すのはバッジョのことだ。説明すると長くなるので気になる人はバッジョ、PK失敗、W杯で調べてみて下さい。(投げやり)
要はW杯優勝が懸かったPK戦でミスキックしたのだ。
だがバッジョはカッコいい。こんな事を言った。
「PKを外すことができるのはPKを蹴る勇気を持つ者だけだ」
負け惜しみで言ったわけではない。事実バッジョは責任を負うことを厭わない“漢”だ。そして何より失敗をする事よりも失敗を恐れて何もしないことの方を嫌う誇りがある。
グリーズマンも試合後「後悔してないもんね。同じ場面でももっかい同じ所に蹴るもんね」と言ったとか。(口調は僕の妄想)
本心は分からない。でも彼もまた誇り高く戦う男なのだろう。
失敗なんて気にするな。どうせ3年後にゃ笑い話だ。でも失敗を恐れて何もしない人生なんて笑い話にもなりゃしない。
…そんな事を考えていたらバスが来た。実の所一本遅れたとしてもギリギリ待ち合わせに間に合うように計算して早めに事務所を出ていたのだ。やるなぁ僕。
しかしながら…!
こんな時に限って道路が混むものだ。案の定車内アナウンスで「10分程遅れて運行しています…」と流れる。悪いことは重なる。泣きっ面に蜂。
僕は恐るおそる先方に電話した。「すみません。ちょっと遅れます。バスが遅れちゃって。えへへ」と聞かれてもいない言い訳をしながら。
こうしてデキるビジネスパーソンとしての僕は消え失せ(幻想)、時間も守れないヘッポコへとスムースに格下げされたのだった。
バッジョの背中が遠く霞む。
やっちまったなぁ。