皆さんは自分の初恋のこと憶えてますか?
僕はよく憶えてません。
で、なんで初恋なのか。
昔中学生のころに、小説家の海音寺潮五郎さんの随筆だったと思いますが、読んだときになるほどな、って思ったことを最近改めて思い出すことがあったので。
それは海音寺さんが「僕は初恋の相手と結婚した人を信用しない」と書いていたことです。初恋の女性とそのまま結ばれるということは女性に振られるというツラくて苦い思いをしないまま大人になるということで、他人の痛みなんか分かりっこない、だから信用しないんだという意味でした。
確かに世の中には自分の力ではどうしようもないことがある、どんなに頑張っても手に入らないものがあるというのは残酷で理不尽に感じるときもあるけど事実でもありますね。そういう挫折をどこかで早い内に経験しておくことは結果として人生に奥行きをもたらす必要な経験だと思います。
この随筆がいつ書かれたものかは全く覚えていませんが、海音寺さんの活動期間を考えるとおよそ戦前からせいぜい1960年代くらいではないかなと思います。なので今とはまた価値観が違うということを考慮しても「人生には挫折はつきもので、それをしらない痛みの分からない人間になるのは嫌だ」というのは現代でも十分通じることだと思います。
先日、元アイドルの女性がファンというかただの頭のおかしいストーカーに襲われるという痛ましい事件がありました。それでちょっとこういうことを思い出したのです。
「今までどんなに熱心に応援してたって、手に入らんものは入らないんだししゃーないな」なぜこのように考えることができないんだろう?それはそれで切ないことかもしれんけど、でも人生なんてそういうことの連続だぜ?
ましてや自分の物にならないなら壊してしまえ、なんて。
せっかく産まれてきてそんなことしかできないのかよ。
襲われた女性はそんなことをされるために生きてきたわけじゃないぞ。
もしかしたら自分が思い描いていた人生とはかけ離れたところに流れ着くかもしれない。何も手に入れられずみじめでマヌケな敗北者として彷徨わなければならないかもしれない。それは自分のせいかもしれないし自分ではどうすることもできない決めつけられていたものかもしれない。あるいはその理不尽さにどうしようもない無力感を覚えることもあるだろう。もしくは怒りを。でもそれが人生だ。だからこそ生きる意味があるんじゃないの。最初からレベル50のドラクエなんて誰が買う?
負けていいし失敗していいし落ちこぼれていいし別に無理して人生は素晴らしい!とか強がる必要もないし他人の人生を愛しなさい!とかキレイ事だけじゃないのも分かる。
ただね、どうせいずれ全部過去のことになるんだよ。気が付いたら過ぎ去ってんだから。
I look to the future it makes me cry
But it seems too real to tell you why
Freed from the century with nothing memory,memory
And I just hope that you can forgiven us
but everything must go
~MANIC STREET PREACHERS Everything Must Go~