ジンジャーエール

辛口エールで一杯ひっかける

強欲ライター

ブロガーにとって新型コロナウイルスはアクセス稼ぐチャンスだ!と発言したバカがいる。発言はたちまち炎上しそのブロガーはヤバイと思ったのか情けない言い訳をしている。これ以上ネット上にゴミを撒き散らかさないでほしいと切に願う。

ネット上に散乱する有害情報

医療や健康に関する情報はとても慎重に扱う必要がある。科学的根拠に基づかない似非科学によって健康被害が出た例は今までたくさんある。最近もホメオパシーだの何だの言ってる人物が自身のブログで一切根拠を示さず新型コロナウイルスに効くという謳い文句でアルコールに香料をぶち込んだだけのようなシロモノを紹介していた。その記事の中で新型コロナウイルスは心のまっすぐな人は罹患しない、とも書いてあった。アホか。天下一アホ大会か。この先一生お前が食うパンにはうっすら黴生えてろ。

 

当然そのようなサイトは報告した。

iryoukoukoku-patroll.com

逮捕されてください。その時は祝杯あげます。イエーーイって。

 

医療健康分野での有害情報というとWELQを思い出す。こういうのから何も学ばないだろうか。人の命に関わるような医療健康の分野は専門家以外が軽々と手を出すべきではない。まず、何が正しくて何が間違っているのか自体素人には判断できないことが多い。だから変な情報を流してしまう可能性がある。たとえ善意であっても間違った情報を流してしまうことは許されないというべきだろう。

 

ましてやアクセスを集めるため、お金を稼ぐためトレンドだからと手を染める。絶対にあってはならないね。logos・ethos・pathosがない。これを無視して成功は得られない。一時的に何かを手にすることはあってもそれは何かを得たわけではなく、実は自分の身を切り売りしているに過ぎない。つまりマイナスなのだ。それは遥かに、ずっと、マイナスなのだ。

非専門家による真偽不明情報の弊害

一応僕も特定の分野では専門家と言われる立場だ。ちなみに専門はお金のことではない。それは僕にとって永遠に専門外であり謎だ。

目の前の専門家より見ず知らずのネット情報

「給料の2ヶ月分」

田沼興次(仮名)は断固とした口調で言った。20歳の田沼は専門学校を卒業後、この会社に新卒で入社してきた。俳優の吉沢亮とお笑い芸人のあばれる君を足して吉沢亮を引いたようなキリッとした顔をしている。

先日この会社を辞めた田沼から連絡があった。自分は解雇されたので給料の2か月分の解雇予告手当を会社は支払うべきだ、と主張する。

「いや、解雇予告手当というのは即時解雇の場合でも30日分となっていて…君の場合は」

そう言う僕の言葉を遮るように田沼はフフンと勝ち誇ったように鼻を鳴らした。

「ネットにはちゃんと2ヶ月分が保証されるって書いてあるんですよ。調べてみてください!」

だいたい田沼は非常に勤務態度に問題があって、何度指導しても改まらなかった。顧客からのクレームも頻発していた。とうとう上司が「も無理。マヂ無理…」と思ったのかどうか知らないがとにかく匙を投げた。「もう好きにしろ。辞めるんなら辞めていいぞ」

この言葉を奇貨とした田沼は翌日退職届を会社に提出しその日から出社しなくなった。話が回ってきた僕が事実関係を整理しようと田沼に連絡をしたところ「解雇予告手当として給料2ヶ月分を払え」と言われたという次第。

(そもそも解雇ですらないじゃないか…)

会社側の対応にももちろん不備というか不細工な点があったのは事実だ。しかし…。百歩譲って仮に解雇だとしても給料2ヶ月分なんて決まりはないぞ…。

僕は専門家としてこれこれこうだ、と事実と彼の誤解を指摘したものの田沼は「はぁ?」と一笑に付した。

「だ・か・ら。ネットには請求できるって書いてあるんですよ?僕が若いから騙せると思ってんですか。もういい、労基署行きます!払ってもらいますからね」

 

すでに5年以上経過したが、会社にはいまだに労基署から連絡はない。田沼からも。元気でやっているだろうか。

 

こんな話はそこらじゅうに転がっている。なぜか一定の人は目の前の専門家の言うことよりも誰かもわからない、専門家ですらない人間が書いたネット上の情報を信じる。たとえ専門家の言うことであっても簡単に信じないのが正しい姿勢だろうに。ましてやどうして得体の知れない「調べてみました(調べてない)!」を信じられるのだろうか。

 

得体の知れないネット情報を信じた結果田沼は無駄な時間を過ごした。時間ならまだしも、訴訟でもしようかと弁護士に相談していれば5,000円くらいはかかったかも知れない。そこで初めて自分がネット情報に騙されていたと気が付けば良いが最悪な場合、会社や社会を逆恨みして事件を起こしてしまう可能性だってある。

埋もれる情報

誤った情報が拡散することの弊害もさることながら、真偽不明の稼がんとするだけのためのゴミ記事が散乱することの問題は正しい情報が埋もれて見えなくなってしまうことにある。専門家の書いた記事や論文などはそもそもSEOなんて考慮せずに書かれているのではなかろうか。検索した時にパッと出てこないことが多い。結果として正しい情報に早くアクセスできなくなる。

 

新型コロナウイルス に絡んで記事を量産し稼ごうなんていうのは、マスクを買い占めて転売する連中と変わらない。要するに恥知らずってことだ。それとも稼いだもん勝ちだとでもいうつもりだろうか。欲をかいた米屋がどうなったか。米騒動をみよ。

困りごとの解決、じゃねーよ

新型コロナウイルスについて非専門家がちょこちょこネット記事を漁って作ったまとめ記事なんて誰の困りごとも解決しない。むしろ混乱を招くだけだ。

 

目先の欲に釣られるような人間はだいたい大成しない。長期的に考えれば信用を得ることこそビジネスでもっとも得難く、価値のあることだからだ。自らの信用を毀損するような人間の周りには質の低い人間しか集まらない。ということは質の低い情報しか得られない可能性が高い。あるいは何か自分の情報を発信しようと思っても質の低い周囲の人間はそもそも拡散する力がない。たとえ一時的に稼ぐことはできても長い目で見れば負のスパイラルに囚われることは必然だろう。

 

欲をかくな、という話ではない。正しく欲をかこう、ということだ。

logos・ethos・pathosを忘れたくはないものだ。