ジンジャーエール

辛口エールで一杯ひっかける

シリーズ働き方改革~有給休暇の正しいとり方~

東洋経済オンラインにこんな記事があった。『先輩社員に聞いた「マズい有給休暇の取り方」 クレーム放置にLINEで申請?若手の失敗6選』

これを読んで「あぁ、そうか。東洋経済のような経済紙でこんな記事が出るようではまだまだ日本での有給休暇取得率が5~6割に留まるのも納得だなぁ」と感じた。少し抜粋してみる。

仕事を放りだした部下の教育を放り出した上司…無限ループ

1.やるべき仕事を放り出して休んでしまう

 「お客様からクレームを受けていたのに、それを放ったらかして休暇に。当然お客様はカンカン。再度のクレーム電話でそのことを知り、代わりに怒鳴られに行った」(広告・41歳)

 「印刷物の校了日に有給休暇を取り、しかもきちんと校了したのかあいまいな状態で一路海外へ。印刷会社からSOSを受けて火消しに走ったが、あまりに責任感がなさすぎる」(流通・37歳)。

2.仕事の引き継ぎをしていない

 「営業マンは月1回、定期的に病院回りをするのだが、その引き継ぎをしないまま休暇へ。病院側からの指摘で気づき、上司である私が行くハメに。『あんた、どういう教育しているんだ』と叱られた」(医療機器・42歳)。

 

こういった仕事のやり残しや、引継ぎをしないまま有給休暇を取得するのはNG!と記事では解説している。

 

これを読んでどう感じるだろうか?

僕にはこれは「マズい有給休暇の取り方」 ではなく「マズい仕事の仕方」にしか思えないし、それで先輩や上司が「マズい有給休暇の取り方してんじゃねーよ。クソが」と愚痴ってても僕にはそれはむしろキミたちの普段の「マズい部下・後輩教育の仕方」の結果なんじゃないだろうか、としか思えない。だから(医療機器・42歳)が「あんた、どういう教育しているんだ」と叱られたのは残念でもないし当然だと思う。上司としてその程度のことも教育できてないんだから。

 有給休暇取るっていつ言うの?…今でしょ!(イマサーラ)

3.直前になって連絡・申請する

 「朝出社したら机の上に有給休暇取得届が置かれていて、『今日から旅行に行くので休ませてください』と。もっと早く言えよ!」(電機・42歳)。

 「寝る前に20代の部下が『明日、有給休暇とらせてください!』とLINEで送ってきた」(IT・43歳)。

 

まず1点。当日朝の有給休暇の申請を会社が拒否することは可能だ。労働日は原則として暦日で考えるので0時~24時ということになる。となると理屈として午前0時には労働日としては始まっているので朝に申請するというのは労働日の途中で休暇を申請することになり、会社もその場合は代替を準備するのが難しいため時季変更権*1を行使できるということだ。だからこの場合(電機・42歳)は「もっと早く言えよ!」ではなく「オマエの有給休暇申請、当日初めて知ったから無効だぜ。欠勤扱いだから。え?前日に机に置いた?ちゃんとオレに意思が伝わるように伝達しないオマエのミスだよ」と言えばいいのだ。これだって有給休暇云々ではなく単に連絡相談報告がなってないだけで、普段からそういうことを教えるのが上司・先輩の役目でしょうに。

 

記事では以下のように解説している。

 『仕事の都合もあるのだろうが、有給休暇の申請はできるだけ早いタイミングでおこなおう。旅行などで3~4日以上休むなら1カ月前、午後半休などでも1週間前には伝えるのが理想だ。』

早めに伝えるに越したことはないが急に旅行に行きたくなったらどうすればいいんだろう?あとシフト制の場合は1か月前にシフトが決まってないから労働日も確定してないので有給休暇を指定できない*2という事態も考えられるが、そもそもシフト制で働く人間は正社員だろうがパートだろうが経済紙なんか読むかよ、とでも考えてるのかしら。

人の振り見て我が振り直せ

4.上司にしか伝えていない

「同僚に急ぎで頼みたい仕事があり、月曜に出社したら、その同僚は休み。上司に聞いたら『あいつは、今週1週間休みだぞ』と。それ、俺にも教えてよ」(IT・38歳)。

有給休暇は上司に取得の意志が伝わっていればいい。

その人が有給休暇を取得することにより誰がどのようにカバーするかを考えるのが管理職の仕事ではないのだろうか。だいたい「急ぎで頼みたい」という相手の事情を無視した仕事を振ろうとしておきながらそれが達成されないことが分かると「それ(有給休暇取得)、俺にも教えてよ」は少し図々しくないか。月曜の朝から急ぎの仕事を頼みたいなら前の週に「もしかしたら急ぎで頼むことがあるかも…」と匂わせておけ!あるいは土日に顧客から依頼があったとしたら、なおさらこっちはそんなの分かるわけないだろ!ということで(IT・38歳)は自分の仕事のスケジュール管理を見直した方が良い。

 

ちなみに記事では『このように、同僚にも伝えておかないと、迷惑をかけることがある。それを防ぐには、共有スケジュールに入力するだけでなく、個別にメールなどで伝え』ておくことをお奨めしている。

 

だからそれは管理職の仕事だって。

ブラックバイトで、アルバイトが辞めたいと言ったら「じゃあ代わりをオマエが探して来たら辞めてもいいよ」と根本的には同じ考え方。

人を集めるのも仕事の割振りを考えるのも管理職の仕事のうちだよ。

ジョブシェアリング

5.繁忙期に取得する

 「営業アシスタントの女性が、フィギュアスケートの羽生くんのおっかけをしていて、年末商戦の時でも関係なく有給休暇を取って国内外に試合を見に行く。おかげでアシスタントの仕事も自分がやることになり、大パニック。羽生くんには罪はないが」(貴金属・39歳)。

 「12月は決算月なのですごく忙しいが、ある部下が年末年始にまとめて有給休暇を取る。『しっかり休まないと、いい仕事できないっすよね』というが、仕事をやり残して休むので周囲をさらに忙しくさせている(怒)」(生活用品・40歳)。

(貴金属・39歳)大パニックって…犬に出くわしたオバQか。

有給休暇に限った話ではないが、繁忙期に例えば体調を崩したり不慮の事故に遭ったりして休まざるを得ないことはあるでしょう。そんな時にいちいち大パニックに陥ったり(怒)なんてマークを使うのか。簡素化や共有化をもう少し進めよう。

したいと思ってするから作法なのであって、強制するのは作法ではない

 6.お礼を言わない

「フォローしても、お礼の一言もない。もう二度とフォローはしないつもり」(出版・45歳)

記事では以下のように続く。

『「ありがとうございました」の一言ぐらいは言うべきだろう。

 お土産も、買う義務はないが、長期間休みをとって旅行に行った場合は、お菓子ぐらい買っていったほうがいい。「自分ばっかり楽しみやがって」と妬んで、仕事上で足を引っ張ってくる人は、決して少なくない。』

 

嫌な職場だな。

もちろん僕だって「ありがとう」といった方が良いとは思う。それはもちろんそうだよ。でもさぁ…(出版・45歳)はいったい誰のために何のために仕事してるの?

じゃあ今後同じようなことがあったらフォローはしないので顧客に、会社に迷惑が掛かっても構わないというわけだね?

なんというプロ意識!

 

「自分ばっかり~」で、仕事上で足を引っ張ってくるような人間がいる会社は論外。そんな会社ではそもそも普段からまともに働けないでしょ。

まとめ

確かに、有給休暇は取得する方も同僚上司にアフターフォローした方が職場の人間関係は円滑に行くと思うよ。

ただ、記事全体に通じるのは未だに日本では有給休暇を取得するのに、それはただの権利の行使なのに「えへへ、なんか有給休暇取っちゃってすみません(;^_^Aよしなにお願いしますm(__)m」的なへりくだりを強制している雰囲気が濃厚だということだ。そこまで気を使わなきゃいけないんだったら取りづらくなるよね。

 

あと日本は祝祭日が多いから結果、年間の取得休暇数は諸外国と変わらないという意見も一部にはあるけれどそれっておかしいよね?国が定めた祝祭日があるから有給休暇という自分の権利を行使しないでもOKだなんてどこの奴隷船の船長かな?

 

有給休暇という権利を行使するので、普段の仕事という義務をしっかりこなすようにというように従業員の意識を教育するべきであり、権利を行使したことを「あいつばかり休みやがって」と足を引っ張るような村社会のメンタリティではグローバルスタンダードなんてただの威勢の良い掛け声に過ぎないことを認識する必要がある。

 

これからの時代の競争に勝ちたいと思うのであれば従業員がどんどん有給休暇を取得できるような会社にするのが手っ取り早いんじゃないか、とさえ思います。

従業員個人で言うならば、いかに周囲に気を遣うかではなく、いかに自分に与えられた職務をこなしたか。有給休暇の正しいとり方はそれ以外にないのではないでしょうか。

*1:労働者が指定する有給休暇日を「その日はもう30人も有給休暇の申請が出ているのでムリ」だから別の日にしてくれと変更する権利

*2:有給休暇を指定できるのは労働日のみ。所定休日に有給休暇を取得する余地はない