ジンジャーエール

辛口エールで一杯ひっかける

日大アメフト事件について思うこと

日大アメフト部が関学との試合でラフプレーを繰り出し大問題になっています。特に関学のQBへの超レイトタックルは選手生命を脅かしかねない危険なものとして糾弾されています。またこうしたラフプレーについて監督から指示があったのでは?ということも問題になっています。

 

アメフト素人が感じたこと

さて、僕はアメフトに関して全くの素人です。ルールもほぼ知りません。でもネットに上がっていたプレーを見れば、どれだけ悪質なプレーかというのはわかります。なぜこういうプレーは起きるのでしょうか。

指示はあったのか

ラフプレーについて、監督からの明確な指示があったのか、選手個人の判断で行ったのかはっきりとしていません。日大の内田監督はこの点について説明するべき責任があるでしょう。もしもラフプレーを受けたのが自チームの選手であれば、監督として激高するはずです。自チームが起こしたことに対して責任をとるのがマネジャーの仕事ではないでしょうか。

選手単独で行ったのなら指導者の責任

もしもああしたプレーを選手が「こうしたほうがよい」と考えてやったのであれば、それは指導者の責任です。危険なプレーを放置するという評判はチームの価値を損なうものです。そんなプレーをしてはいけない、と指導するべきでしょう。

監督からの指示であれば指導者の責任

はい、どっちにしろ指導者に責任があることは間違いありません。もしこうした指示を「作戦」と考えているのであれば、それは自らを「無能です」と叫んでいる様なものではないでしょうか。相手を上回る戦略や戦術を見つけることができずに、安易な方法を選択する。普通にやったら勝てません、と宣言している様なものでしょう。

問題はなぜ起きたのか

日大アメフト部はもともと強豪だそうです。甲子園ボウルでは21度の優勝を誇っています。僕は甲子園ボウルというのがいまいちわかりませんが、きっと大きな大会なのでしょう。そんな強豪チームがなぜ。

勝たなくてはならないプレッシャー

やはりこれは大きいと思います。結果を出すことを追求する、というよりは結果が出せないことを極度に恐れる。なんでも昨年の甲子園ボウルでの優勝は実に27年ぶりに関学を倒しての優勝だったということです。これをまぐれと言わせないためには、勝ち続けるしかないと考えたのでしょうか。

勝てば官軍

やり方はどうあれ「勝てば官軍」と見られるのも要因の一つでしょう。よく2位では忘れ去られるというのがあります。僕個人としては決してそんなことはないと思っていますが。やはり勝つことにこだわる勝利至上主義には一定の魅力があるのでしょう。勝つことで得られる周囲の賞賛や自己承認は確かに味わうとクセになりやすいモノです。

勝利至上主義の問題点

ビジネスの世界でも「儲かれば何でもいい」「利益至上主義」というべき会社があります。消費者のことを考えてないとか自社の社員を使い潰すとか。こうした企業が長続きしないのは明白です。それはなぜか。

勝てば官軍は一時的なもの

勝つことよりも勝った後にどう統治するかの方が継続的発展にはより重要です。たとえば戦争で勝ったとして、その後占領した領土で圧政や搾取を繰り返せば人心はつかめません。企業活動で言えば、一時的に市場を席巻しても顧客サービスを低下させたり従業員をを使い潰していたりすれば、自滅していきます。

問題が起きた際の対処を持たない 

なにより勝利至上主義のチームでは、問題が起きた時に機能不全に陥ることがよくあります。今回の日大も内田監督は試合後のインタビューだけで、問題が大きくなったあと何の説明もしていません。おそらく「なんでこれくらいのことで皆騒いでるんだ」とか「ああいう行為をしているのはウチだけじゃないだろ」と感じているのかもしれません。なにが問題なのかを適切に把握できていないからこそ、適切な問題対応ができないのでしょう。

脆い組織

こういう組織は本当にもろいです。不祥事に対する初動を間違えた企業はたいていその後坂道を転げ落ちています。雪印食品とか船場吉兆とか。「相手を怪我させても勝つ」などという信念はやはり無理があります。自分達を伸ばすのではなく、相手を潰すことから始まるわけですから他者ありきなんですね。自分たちの本当の実力は伸びないまま中途半端に勝つことで勘違いをしてしまう。そこで問題が起きた際には、実力が伴った組織でもなく、信念もないからオタオタするしかない。継続性の無い組織は脆い組織です。

 栄光と敬意

栄光とは敬意です。1982年ワールドカップのブラジル代表がいまでも称賛されるのは、自分たちの信念にしたがって美しいサッカーにこだわったからです。期待された優勝には届きませんでしたが、ブラジル代表の姿勢はサッカーファンから敬意を受けるに値するものだったのです。

元オランダ代表で、バルセロナの伝説的な名将でもあったヨハン・クライフも言っています。

「美しく敗れることを恥と思うな。無様に勝つことを恥と思え」

勝ちさえすれば、儲かりさえすれば何でもいいという風潮は見直したほうがいい。いまは日大アメフト部のイメージダウンに過ぎないけど、放置すれば日大自体の価値が下がることになるから日大も早めに何か声明を出した方がいいんじゃないかと思うのですが。いまネット上ではラフプレーをした選手の個人情報が晒され、攻撃されています。確かにやったことは良くない。しかし個人の人格を誹謗中傷されるのは行き過ぎだと思う。だからこそ監督が出てきて、自分に責任があるというべきじゃないだろうか。それがリーダーというものではないでしょうか。にしても至学館のパワハラ騒動といい、大学スポーツの指導体制は見直した方がいいね。