ジンジャーエール

辛口エールで一杯ひっかける

セクハラ問題にみる病んだ日本

人気ブロガーで作家のはあちゅう氏が、以前勤めていた電通で有名クリエイターの岸勇希氏から数々のセクハラ・パワハラを受けていたことを告発したことが波紋を呼んでいます。#metooの広がりを受け世界中で意識改善の動きが出ているセクハラ。日本では今後どうなるのでしょうか。

声をあげられるのは強い女性たち

 セクハラ被害について告発できるのは強い女性ばかりです。性格的に強かったり、自活できるきちんとした生活の基盤や能力を持っている人。または自分の声を世間に届けることができる一定の影響力を持っている人たち。

彼女たちが声を上げるのはもちろん良いことです。

しかし社会には声を上げることができない女性たちもいます。というよりはそういう弱い女性がほとんどです。彼女たちはセクハラ被害に遭っても報復や仕事を失うことを恐れたり、恥ずかしさなどを理由に黙ったままでいます。

そのため泣き寝入りすることが多く、中には自主的に退職せざるを得なかったり、メンタル不調に陥ったり、最悪の場合本人の意に沿わないのに逃げ出せず、性的嫌がらせをや暴力を甘受していることもあります。

反省をしない男性たち

セクハラに関しては「大した問題じゃない」といまだに考えている男性が多いことも問題解決の妨げになっています。そしてことが露見し問題になると、途端に保身に走ります。以前僕がかかわったことのあるケースでこんなことがありました。

 

ある飲食店の男性社員が女性アルバイトと仲良くなりました。仲良くなったといっても別に男女の中ではなく、まぁ下ネタを振っても拒否しない、時にはのってくれるといった程度のものです。

しかし男性社員は「イケる」と勘違いしてしまいました。あろうことか自分の裸の写真をメールで送りつけ「君のも送ってよ♡」と言ってのけたのです。オイオイ。

女性アルバイトからすると男性社員との関係は単に仲の良い職場の上司という認識でした。当たり前ですが。なのでこのメールに驚き、本社の相談窓口に通報して発覚したのです。

 

さてここからが男性の本質を垣間見た部分です。この男性社員は会社の規定に照らして懲戒解雇処分となりました。それで退職の際には失業等給付を受けるのに離職票を発行するのですが、そこには離職理由を記入する欄があります。当然「セクハラ行為による懲戒解雇」と記入しました。本人の印鑑が必要なため書類を渡すと「離職理由を書き直して欲しい」と要望してきたのです。

「セクハラでクビ」と書いてあるのでは体裁が悪い。カッコがつかない。だから「一身上の都合」に変えて欲しいというのです。もちろん光の速さで却下、却下、却下です。

被害女性の心の傷の回復よりも自身の体裁が気になるなんて!

謝罪はしていましたが、これでは本当に反省しているのか、と疑われてもしょうがないでしょう。

男性側の反論

さて、セクハラに関して男性側からよくある反論があります。その多くは女性に問題があるとしてセクハラを容認、正当化するものです。

セクハラ冤罪

痴漢冤罪のようにセクハラも冤罪があるんじゃないか、というのが男性側の不満です。これは「セクハラは、された方がセクハラと感じたらセクハラとして成立する」というやや乱暴な風説に由来してます。だいたいこの風説は半分以上間違っています。

セクハラを受けたと感じた側が訴えを起こすことはできるけど、本当にセクハラかどうかはちゃんと調べます。当たり前の話だけど。

男性がセクハラしてないことを証明するのは難しいんじゃないか、と考えるかもしれませんが、本当に冤罪だった場合(ややこしいな)はお互いから話を聞くとわりとすぐわかるものですよ。作り話の場合は、話の整合性が取れてなかったり不自然な流れになります。

そもそも愉快犯的にセクハラ冤罪をする女性なんてほとんどいませんよ。道を歩いてて突然殴りかかってくる人なんてそんなにいないでしょ?それと同じで普通に生活している普通の女性はまずそんなことしません。だから一部男性の言うようなセクハラの多くは冤罪だというのは間違いです。

女性もセクハラをしている

 世の多くの男性は女性だってセクハラをしているじゃないかと感じているでしょう。たとえば男性の容姿をとらえて「ハゲ」だの「デブ」だの「キモイ」だの…。

もちろんこれらの言動はセクハラになり得ます。「男のくせに」なんかもよくないですね。そういう意味では女性も男性に対して性的からかいや嫌がらせをしてはいけないのは同様です。女性が言う分にはOKなんてことはないです。

しかしセクハラに関して女性➔男性よりも男性➔女性のほうが深刻化しやすいのは事実です。一般的に男性の方が体力が強かったり社会的地位が高いことなどや、身体接触は男性➔女性で起きやすいことなどの理由が考えられます。

#metooの意味

てなことをつらつらと書いているときに漫画家の倉田真由美氏が「SNSでセクハラを告発する風潮に警鐘」を鳴らしたというネット記事を読みました。なんでもSNSで一方的に告発するのはおかしい、客観的な事実で検証されたわけでもないのに相手に社会的制裁を与えることになるし危険で自重すべきだ、告発するなら裁判をしろ、というようなことをテレビ番組の中で言ったそうです。

 

アホにつける薬はないのかよ、と思ってしまいます。

 

そもそもセクハラは力関係などを背景に一方的になされるものであること。

普通の人にとって裁判するのは非常に負担となること。

社会的制裁というのは事実かどうか検証もせずに騒ぎ立てる外野が起こしているものであってセクハラ被害者が行っているわけではないこと。

今回のはあちゅう氏の場合は思いつきで告発したわけではなく何か月も準備していること。

普通の人にとってはSNSで情報発信できるようになって声を上げやすくなったこと。

 

こういったことを無視して、セクハラ加害者の事情を慮るって言うのはホントに日本的だよなぁ。被害者叩きに精を出すいやらしさ。どうかしてるぜ。

 

#metooは「声を上げろ」ということではなく「一人で悩まないで」ってことだと僕は思ってる。

しかし倉田真由美氏のようにセクハラする側に媚び、おもねる人間がいることで(しかも最悪なことに発言がニュースで取り上げられるなど一定の影響力がある)弱い女性たちが立ち上がるチャンスが奪われるとしたら残念だ。非常に残念だ。

 

だいたいなんだって倉田真由美氏はセクハラする側に媚び、おもねる必要があるのでしょうか?

セクハラを告発したかったら裁判してみろ、だなんてまさにセクハラをしておきながら開き直る人間そのものの言い草じゃないですか。

 

さっきも言ったようにセクハラ冤罪をしようとしてもちゃんと調べれば割とすぐにわかるし、もしウソの告発であれば名誉棄損などの罪に問われるわけです。そんなことをしようと考える女性が世の中にはたくさんいると本気で思っているとしたら頭の方がだいぶヤバいですね。

セクハラは個人間の問題ではなく全体の問題

セクハラは決して個人間の問題ではありません。たとえばある会社でセクハラ問題が発生したとします。それが個別的な痴情のもつれであることは少ないです。だいたい組織自体に何らかの問題があるケースがほとんどです。

相談できる体制がないとか、知ってたけど見て見ぬ振りしたとか。企業統治が機能していない。

そうしたことに気づかずに放置しておくと、とんでもないことになります。

それこそ営業職なんかでも「女は身体使ってなんぼ」みたいに考えてる男性はいまだにいますよね。むしろ自分よりも成績のいい女性営業社員を陰で「枕やってんだろ」とか罵ったりね。そんなわけねーじゃん、お前がその女性社員に比べて能力も努力も劣ってるだけだろと僕なんかは思うんですけどねぇ。

 

1億層活躍を目指すのであれば、日本ももっとセクハラに対して「あってはならないこと」という意識を持ち、被害者が「声を上げやすい」世の中にすることを推進していかなければならないです。